代表の佐藤さんの似顔絵がトレードマーク、奥尻島の「さとう食材」。
北海道民もなかなか訪れる機会の少ない道南の離島「奥尻島」から
島の宝物とも言える魚介類を加工、全国に販売するこの会社にお話を伺いました。
人も素材も、奥尻島生まれ奥尻島育ち
代表の佐藤さんは奥尻島生まれ奥尻島育ち。
北海道の田舎は進学の選択肢が狭く、多くは町の外に出て、進学の希望を叶えることも少なくありません。
佐藤さんもその中の一人。高校野球に打ち込むため島を出て進学することを決意。
その後島外に出たまま社会人となりましたが、そこでも水産業とは縁遠いサービス業に従事し10年の月日が流れました。
しかし、その後奥尻に戻って、地元の水産加工業者に就職。
全く別の世界から、地元の水産加工会社へ飛び込んだのです。
そこで奥尻島の海の幸がいかに美味しいかを再認識することとなりました。
「自分の手でこの美味しさを伝えたい」とこの会社を起業するに至ったそうです。
しかも、ここで更に凄いと感じたのが、その会社はご家族やご親戚がやっていたという訳ではないこと。
「家業を継がなければいけないから仕方なく…」という話はよくありますが
佐藤さんの場合はご自身の意思で起業。
取り扱うのはもちろん奥尻島でとれた素材を使った加工品。
仕入れから加工、販売までの流れを一貫して島内で行っています。
鮮度抜群の状態ですぐ加工、すぐ販売。
コンパクトな離島だからこそ可能なスピードで美味しさを全国に届けています。

安心・安全・素材の味を伝える事を目指して
奥尻島の海の幸。この魅力をどうやったら伝えられるだろう。
もちろんそのまま食べてもらえれば何も問題はありません。
しかし全国に流通させるとなると加工が必須になってきます。
加工すれば日持ちはする。でも中途半端な加工は本来のおいしさを損なう。
そこで、さとう食材では商品を作るにあたり、心に決めている事があります。
・メインの素材は全て、奥尻島のものを使う
・安心安全、できる限り添加物を使わない
・鮮度命、食材の旬を見極め、一番おいしい時期に一番おいしい方法で加工する
そのルールの中で、素材の良さを最大限に引き出す、絶妙な加工方法を日々研究しています。

味を知ればファンになる!全国の物産展を周る理由
さとう食材の主な販路は全国で開催される北海道物産展でした。
まずは「この美味しさに出会って頂く」のが一番早い。
全国の物産展を巡っては、各地に根強いファンを増やしていきました。
「食べたら美味しくてねぇ」「もうなくなっちゃったからさ、追加で欲しいんだよね」
物産展が終わったあと、手紙やお電話をくれるお客様も多いそうです。
一度食べたら、いつでも家に用意しておきたい、そんな商品ばかり。
物産展で順調に知名度を上げる中、突如訪れた「コロナショック」。
対面販売の極ともいえる全国の物産展は軒並み中止となってしまいます。
前年に比べ9割近くも売り上げが減ってしまう危機的状況。
そんな中でもクラウドファンディングに挑戦したり、弊社の「スマイルマルシェ」を利用して頂き
奥尻島から全国へ「安心安全、鮮度と旬にこだわった」商品を届けることを諦めません。
限られた時期限定の美味しさを通年食卓に
さとう食材は代表の佐藤さんを中心に、奥様やお姉様、ご両親などが働くほぼ家族経営。
互いに信頼しあう抜群のチームワークで生み出し、育ててきた商品ばかりです。
どれをとっても手間暇を惜しまず丁寧に加工された商品ばかりですが
その中でのNo.1、「作り手として一番おススメする商品は何ですか?」とお伺いしたところ
「うにルイベ」「粒ウニ」という回答がありました。
贅沢珍味「うにルイベ」
ルイベ、というのは北海道ならではの食べ方。
アイヌ語で「溶ける食べ物」を意味する「ルイペ」から来ていると言われています。(諸説あり)
元々はサケやマスなどの魚を冷凍させてから、解凍させないまま刺身にして食べる郷土料理のこと。
生うには水分が豊富で、凍らせることで生じる結晶も食味を損ないがちなので
基本は冷凍厳禁の食材です。
しかし、さとう食材のうにルイベは
「奥尻島産の厳選した生うにの水分を独自の製法でしっかり切ることで濃厚で甘みを強く感じられる」
商品に仕上がっているとの事。
(完全解凍は厳禁です!添加物を使用していないためウニが溶けて液状になってしまいます…)
凍ったままアツアツのご飯の上にのせてシャリシャリとした繊細な食感と濃厚なウニの味を楽しめます。
門外不出、こだわりのオリジナルレシピで漬ける「粒ウニ」
インタビューの中で「私のオススメはうにルイベですけど、主人は粒ウニかな…」とお話して下さった奥様。
更に詳しい話を伺うと、なんとこの「粒ウニ」、家族経営の会社の中でも代表しかレシピを知らないのだとか。
粒ウニを加工する日は、佐藤代表が朝早くから一人で工場に籠り、誰にもその加工方法を見せずに製造するという
まさに門外不出レシピで加工された究極の粒ウニなのです。


ウニ漁は資源保護のため各地域によって漁のできる期間が定められています。
奥尻島近辺のウニは夏の一瞬しか採れません。
また、そのウニ漁、実はとっても手間がかかります。小さな舟で丁寧に獲るのです。
なので、少しでも波があると漁に出ることすら許されない。
運よく水揚げできてもその後は殻向きをして手作業で不純物を丁寧に取り除いて…
完成品になるまで気の遠くなるような手間がかかります。
一般的に「ウニは高いから…」という意見もあるでしょう。
でも、その手間を考えると納得のいくお値段なのです。
そんな貴重なウニを最適な時期に最適な方法で加工することにより
本来期間限定で味わえる美味しさを季節問わずご家庭で楽しんで頂けます。
これだけの手間を惜しまずに美味しさを追求するのですから
ほっけ、ツブ、イカ、塩辛や塩わかめ…どの商品も手抜きなしで美味しさを追求しているに違いありません。
インタビューで感じられた会社の雰囲気
今回インタビューにお答えくださった代表の奥様、佐藤千尋さん。
とても親切にご対応下さり、物腰の柔らかな方だ…と感じながらお話を聞いていくと、実は仕事も子育ても同時進行で精力的にこなすスーパーウーマンでした。仕事に真面目・一生懸命な代表の姿に呼応するように精力的に働くご家族の姿を目の当たりにしました。
結束の固い家族中心に経営するからこそこんなにも魅力のある会社なのだと実感しています。
道東出身の筆者には恐らく一番遠い北海道のエリア、奥尻島。
コロナが落ち着くまでは商品を購入して予習をしつつ、コロナが落ち着いたら家族で奥尻島を訪れたいと思いました。
その際はぜひ、直売所でもお話を伺いたいと思います!