明治時代から4代も続く漁師の家に生まれ、漁師として、そして生産者として
せたな町からこだわりの商品を発信し続けるマーレ旭丸の西田さん。
西田さんの信念、せたな町の魅力、全国のファンの為に事業を続けていくことの責任…
興味深く、そして心に響くお話をたくさんお話して頂きました。
全ての素材の【旬】を大事に
西田さんの作る商品に共通するキーワードは「安心・安全・美味しい」。
マーレ旭丸ブログのトップページ、一番最初の文言は
「おいしいも安心も、とっても大切だから、誠実に食べものを造りたいと思います」
と書かれています。
その「おいしさ・安全」を支えるのが地元、せたな町とその近海の自然の恵み。
もちろん西田さんの獲る海産品を基本として加工するのですが
一緒に使用する素材選びにももちろん手を抜きません。
たとえば、じゃがいも。
ホクホクのじゃがいもと美味しいダシが出るイカゲソを合わせて焚き上げる「じゃがいか」という商品があります。
実は、使用しているじゃがいももせたな町のもの。
「北海道は量・質ともに最大のジャガイモ生産地だけど、せたな町周辺は中でも特にデンプン質の上がる土壌なんだよ。だからホクホクして美味しいの。一番おいしい根菜類ができるのはせたな町だと思ってる」
このじゃがいか、全国の美味しいものと向き合ってきた当店の店長が一口食べて大ファンになってしまったというエピソードがあるのですが
欲しいと思ってもすぐには手に入りません。
「うちは全ての素材の旬を意識して作っているからね」
「同じ品種でも、同じ土で作っても芋は加工する時期によって味が変わるじゃない?」
ジャガイモを収穫する時期は漁師として忙しい時期。
ジャガイモはうまく貯蔵できれば日持ちのする食材ですが…
「忙しい時期は寝かせておいて、暇になった2月ごろに仕込むってこともできなくはないけど、そうすると寝かせた分デンプンが糖化しちゃうからね。甘味は出るけど、ホクホク感が出ない。じゃがいもだって生きているからね。味が変わるの。寝かせて甘くなったらいい、というものでもない」
…という理由から、仕込みは年一回、最適なタイミングで。
じゃがいかに限らず、基本的に売り切れたら次のシーズンまで終売、というのがマーレ旭丸の商品なのです。
もう一つ、マーレ旭丸の人気商品「いかめし」。
このいかめしに詰める米もまた、せたな町のものだと言います。
「せたな町は日本一早く洋上風車が立った町。今もなお風車がどんどん増えていく、その位風が強いんです。風が強くて害虫が少ないという事もあって、有機栽培農法に取り組む人の多い地域でね」
「その中でも特に、自分の農業にこだわりと信念をもってしっかり有機栽培に取り組む人の米を使っている。」
「生産者がどうつくっているか、どんな農薬を使っているか、はっきり見えるものでしか判断しない。自分の目で直接生産者と畑を見て、ここは信頼できると思ったものしか使わないです」



このほかマーレ旭丸さんでは冷凍いかめしも製造されています。

という訳で持ち帰って晩御飯にしました。
つまみ食いしたい気持ちを抑えて撮影。もちろんこの後すぐなくなりました…。
じゃがいかの芋も、いかめしの米も、せたな町産。
地元で生産されたもの、その中でも「自信をもってお客様にお届けできる」、
西田さんが「品質的に優れていると認める」ものだけを使う。
まさにMade in せたな町であり、Made of せたな町とも言える商品ばかり。
マーレ旭丸の商品は「丁寧に選び抜いた素材、それぞれの美味しさのピークを閉じ込めた商品」を味わう事ができるのです。
信念をもって続けることが大事


西田さんは約35 年前、それこそ「6次化産業」という言葉がメジャーではない時代から自身の手で食材加工を始め、約25 年前からはお客様と直接対話・互いに顔を見て商売がしたいと1 年のうち7 ヵ月は海に出て、残りの5 ヵ月は全国のデパートへ自ら消費者に会いに行く生活を続けていました。
(現在、西田さんは主に漁業と加工に専念、道外物産展ではその意思をしっかり伝える社員・スタッフが催事を担当しているそうです)
今でこそ「生産者が加工、販売までを手掛ける」事は珍しくなくなってきましたが、その当時はまだまだそのような生産者は珍しかったようです。
「出る杭は打たれる」という言葉にあるように、先進的な事をやる人には批判がつきもので、西田さんも例外なく様々な言葉を受けたそうな。
しかし、西田さんは自身の信念を曲げません。
自分で獲った美味しいものを、自分の納得いく味を、直接お客様に届けてきました。
「何を言われても、批判されてもへこたれない。言われれば言われるほど燃える性格だしね」
と笑って話してくださった西田さん。
「これだという信念を軸にやり続ける、継続する、意思を持ち続けるという事が大事だよ。」
「しっかり信念もってやってる人だけが、折れても折れても立て直しができるから」
西田さんが紡ぐ信念は、全ての職業に通じることだと思いました。
そして、それはコロナショックで経済が低迷する今の状況においても深く心に刺さる言葉だと感じました。
やればやるほど利益は減る、それでも貫く意思
マーレ旭丸の商品は一見すると決して安いと言える商品ではありません。
創業当初と比べると物価は上がり、メインで取り扱うイカなどは顕著に漁獲量が減ってきているようです。
そんな状況の中でも無理やり価格を抑えよう、利益を出そうとすればできないことはありませんが、その方法は「添加物を増やす」だったり「素材、味に妥協する」そのような結果にならざるを得ない。
そしてもちろん、西田さんは「そんなことする位なら廃業した方がマシだよね」というタイプ。
「うちはね、価格競争ではなく、徹底的に反対方向へ舵を切ってるの。コストと手間をかけてでも安心で、安全で、美味しいもの作らなくちゃ」
「手っ取り早く作って一気にお金を稼いで店を閉める…売り逃げみたいなことする人もたくさん見てきたけど、それってお客様を裏切ることだから。それは絶対やりたくない。信頼がすべてだもの。」
「信頼がすべて」インタビュー中、この理念は何度も言葉を変えて登場します。
そして、その信頼は一朝一夕で作り上げられるものではありません。
「やればやるほど、誠意を込めてやるほどお金がたまらないよね。お客さんからも『趣味でやってるんでしょ』と笑われちゃうくらい」
しかし、そうやって貫く意思と丁寧な商品づくりは絶大な信頼とファンを生みます。
物産店でお客さんが商品を手に取ってくれた時は
「いやー、大変だよ!これ食べたら絶対他のもの食べられなくなっちゃうから注意してね!」
と声がけしながら売るという西田さん。
「人間の舌ってのは一度美味しいもの食べるともう戻れないの。怖いよね」
特にコロナ下で外出自粛要請が続いた最近は、そのようなお客様からのSOS 電話が多いそう。
「お肉はスーパーで安いものから高いものまである程度のものが手に入るけど、魚はマーレさんのじゃないと…西田さんセレクトのお魚送ってもらえませんか」
というようなお電話を頂く事も。

せたな町の風がイカの旨味をぎゅっと閉じ込めてくれます。


こちらはうにの殻剥き。丁寧に一つ一つピンセットで殻を取り除きます。
西田さんの商品がこれだけ必要としているお客様を生んでいる…お話を伺って
「それは…そんなに必要とされてたら尚更、投げ出したり辞める訳にはいかないですよね」
思わず口にした言葉に西田さんも「そうなんだよね」と笑ったのでした。
「あるだけほしい」熱烈なファンを生み出す商品たち
インタビューの翌日から東京池袋の百貨店で久しぶりの催事出店との情報を見かけて
「西田さんがいらっしゃるのですか?」と伺うと、西田さんの娘さんが現場にいらっしゃるとの事。
インタビューですっかり「食べたい!!」衝動が起きた私はその場で週末出かけようと決断しました。
そして2日後、私自身もかなり久しぶりとなる北海道物産展にお邪魔してきました。
他のブースは行列を作るお客様をレジの人がどんどんさばいていく感じを受けましたが、マーレ旭丸ブースは何だか雰囲気が違う。
会場の規模を考えるとそれほど大きくないブースでしたが、その小さいブースにスタッフが4人。(西田さんの娘さんもいらっしゃいました)
スタッフの密度が濃いので、行列をただ捌くという印象ではなく
お客様一人一人がじっくり商品を選び、お店の方も一人一人にしっかり対応して売買が成立しているという印象を受けました。
中でも驚いたのが、私の隣で冷凍ケースに手を伸ばした女性の方のケース。
恐らくマーレ旭丸の大ファンなのでしょう。数も値段も詳しく見ないまま並んでいるいかそうめんを指して「ここにあるやつ全部ちょうだい」と。
ここまでで述べた通り、マーレ旭丸の商品は決して安くありません。
(手間や製造コストを考慮したら適正価格、もしかしたら安い方だとは思いますが)
そんな商品を「ここにあるだけほしい」と言わせてしまうのが西田さんの作る商品の凄い所。
スタッフさんが呆気に取られている私の「それ私も欲しいです」を察して下さり、「いかそうめん、まだ在庫あるよね?」と確認してくださり、「倉庫から出してきますのでお待ちください!」と仰って頂いて無事購入する事ができたのでした。


私ももっと買えばよかった…
物産展の中止と弊社での販売
マーレ旭丸にとって物産展はお客様とのかかわりが直接持てるとても貴重で大事な場所。
お客様との直接の対話が信頼を生み、ニーズを拾う事ができる。
しかし、コロナショックでその大事な「交流の場」である物産展は昨年末以降次々と中止になってしまいます。
出店予定だった物産展は春だけで8か所も中止に。
やっと秋の物産展を各百貨店が開催する見込みではありますが、以前コロナ禍は落ち着いておらず
「新しい生活様式」が求められる昨今、どのような人の動きがあるかは未知のまま。
「これからは対面でやっていくだけでは恐らくダメだよね、非対面の売り方も混ぜながらじゃないと」
「でも、非対面だけじゃ寂しいよね、お客様から教わることがたくさんあるからさ」
「色々やってみようと思うよ、今後その状況に対応していけないってことはそこで会社が終わるって事だから」
弊社の「SmileMarcehe」での販売も新しい取り組みの一つ。
当プロジェクトは立ち上げ当初、「すぐにでも売上を業者に届ける」スピード感を重視し、
初回の打ち合わせからたった一週間で立ち上げ、販売を開始するというものでした。
人と人との繋がり、信頼を何よりも大事にする西田さん。
通常は飛び込みで商品販売を呼び掛ける業者に商品を任せることなど絶対にしないことです。
でも、今回このプロジェクトは賛同する様々な会社が中心となった合同プロジェクト。
中でも長年西田さんと交流のあるヤマト運輸の局長さんがお声がけ下さったおかげで、弊社での即時販売スタートが実現しました。
当プロジェクトのコンセプトは「ペイフォワード」。
一番最初のそのきっかけから、人と人との繋がり・信頼がベースになっている事をお伺いし、とても嬉しくなりました。
商品が事業者さんの手を離れる最初のその瞬間から、最後の子ども食堂まで、経由する方々の温かな想いが詰まっているスマイルマルシェプロジェクト。
ぜひ皆様も一緒にこの輪の中に加わって頂けたら幸いです。
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